ナイチンゲールデー

 医療活動と医療衛生環境の発展のみならず、助け合いの精神など看護、看護教育学、社会起業家、統計学の分野で大きな功績を遺したフローレンス・ナイチンゲールの誕生日に因んで、赤十字社が5月12日にナイチンゲールデーとして記念日を制定しました。この日に関連して、国際看護師協会が「国際看護師の日」、厚労省と日本看護教会が「看護の日」と制定しました。21世紀の高齢社会を支えていくためには、看護の心、ケアの心、助け合いの心を私達ひとりひとりが分かち合うことが必要です。こうした心を、老若男女を問わず誰もが育むきっかけとなるよう、市民・有識者による運動が行われています。そして、今年2020年はナイチンゲール生誕200年なので「看護の年」となっています。

 1853年~1856年に起こったクリミア戦争下の野戦病院で、ナイチンゲールは負傷兵たちへの献身的な看護活動に従事、負傷者看護の重要さと尊さを社会に広く認識させました。また、統計に基づく医療衛生環境改善のための改革を率先して行ったことから、主に英国においてナイチンゲールは統計学の先駆者としても称されています。1860年には、英国・ロンドン聖トーマス病院付属の形でナイチンゲール看護学校を設立しています。ナイチンゲール看護学校は当時としては異例であり、世界初となる宗教色が一切ない看護学校で、ナイチンゲールの医療を必要とするすべての人に手を差し伸べる姿勢と信念が伺える象徴とされています。

 普段は、当たり前のこととして見過ごされがちな医療活動ですが、今年に入って突然、新型コロナウィルスが世界を襲い、多くの感染者・死亡者が出ており、医療従事者に多大な負担をかけています。いつまで自粛が続くのか、ワクチンは開発中ですが、予測や判断のもととなる日々、発表される統計データ、基本再生算数、実効再生算数、集団免疫率などの統計分析・数理モデルや今日の医療看護体制などはナイチンゲールから始まっていたのですね。World Health Organization(WHO)のホームページをみるとUniversal Health Coverage(UHC)達成のために看護師をきちんと評価することが大事とされています。UHCとは世界中の国々が躍起になって取り組んでいる活動で「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを実現するための活動のことを指しています。そして、Triple Impactというレポートには、看護を発展強化することで、健康の向上、より良い男女平等社会、より強固な経済を実現することができると書かれています。

 偶然にも2020年の「看護の年」に新型コロナウィルスが世界に猛威をふるい、最前線で戦う医療従事者たちへの感謝の気持ちを伝えようと世界中、様々なレベルで様々な取り組みを見せていますが、看護師が世界の医療従事者の圧倒的最大多数を占めていること、世界中がUHCを達成するには看護師がその能力を最大限発揮できるかどうかにかかっていること、それにも関わらず、看護師はあまりにも過小評価され、その貢献が不当評価されてしまっていることを考えると、今回のことをきっかけに、私達も医療従事者をはじめ、最前線で社会を支えてくれる人たちにただ感謝するだけでなく、看護の重要性をきちんと認識し、看護師を盛り上げていけるような流れにしてゆかなければならないと思います。傷ついた世界が回復するための鍵は看護師が握っているのかもしれません。

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Triple Impact
このレポートはイギリスに設置され、国際保健の研究、アドバイスを行っているAll-Party Parliamentary Group on Global Healthという組織により発表されたものです。英語だけど頑張って読んでください!
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