飼料用稲わら


 日本は少子高齢化、人口減少によりこれから先、食料需要の減少が予想されています。特にお米は、食の多様化により需要減少を続けており、生産農家は生産調整を余儀なくされています。食の多様化は自由で豊富な食の選択をもたらしましたが、一方では、海外からの農畜産物の流入により自国の農産物の需要と供給のバランスに大きな影響を与えました。結果、日本の食は海外からの農畜産物に依存する形になってしまいました。和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、海外の日本食ブームにあやかって日本の農畜産物の輸出に力を入れる方向がありますが、日本の食料自給率が30%台に低迷したままなので食料自給率向上のため、主食用米から飼料用米の生産に置き換えていく方向もあります。これまでお米などを生産する農家と畜産農家はそれぞれ生産性の観点から別々に独立して発展する方向で歩んできましたが、今日、その方向は限界になっています。

 耕蓄分離、食農分離から生じている問題に対処するには、耕蓄連携を中核とする農業内の循環を改めて構築し、それに都市と農村の間の循環を適切に組み合わせていくことが基本的な流れとして必要となってきます。日本では、年間92万トン(平成30年、農水省飼料課調べ)の稲わらが、飼料として主に肥育牛に給与されています。飼料として利用されている稲わらのうち75%にあたる69万トンは国内産で、残りは輸入されています。水稲を収穫した後の稲わらについては、有効活用されずにすき込みや焼却などされているものも多くあります。他方で、牛を肥育している農家からは、国産の飼料用稲わらを求める声も多いです。動画は、弊社の水田で稲刈りをした後の稲わらの収集作業をしているものです。カビや泥が付着していたり、乾燥が不十分な稲わらは、給与された牛が病気になってしまうため、飼料としては利用できません。このため、飼料用としての稲わらは、泥が稲わらに付着しない乾いた圃場でしっかり乾燥させることが必要です。

 飼料用稲わらは、稲の茎に含まれる色素(青み)の成分であるβカロテンは、給与した牛の肉質(肉への脂肪の入り方や脂肪の色)に影響するため、一般に青みの残った稲わらは肥育牛向けの飼料としては好まれません。稲わらの飼料利用については、水稲の収穫前から稲わらの色味や乾燥状態、運搬する際の形状などについて、弊社の場合、自社内で黒毛和牛「きたかみ牛」を肥育する畜産課の要望を把握し、要望にできるたけ近い状態の稲わらを収集するように工夫しています。肉質本位で考えられた飼料で牛は育てられるので色、味、風味に優れた特徴を持つそうです。「きたかみ牛」にさらなる付加価値をつけるため、水稲を活用した稲わらや稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ、以下WCS)を牛の飼料として与える取り組みを行っています。

 肉牛には、発育段階、給与時期、期間、量などを考慮し、稲わらやWCSと他の飼料を組み合わせて与えています。国産飼料の活用は多少コストがかかりますが、目に見える安心安全がアピールでき、自給率の向上や地産地消にもつながります。私達が住んでいる土地には、その気候や地形などの環境に適した食べ物が育ちます。熱帯には熱帯の特徴があり、寒帯には寒帯の特徴があり、私達が年中ほしいままに他国・多帯のものを現状は、実はとんでもない人間生理の破壊につながることが次第に判明してきています。人間はなるべく生を受けたところの、いつも住み慣れた地域の、季節のものを食するのが一番です。今年はコロナ禍もあり、日本の農家も多大な影響を受けているなか、ひとりひとりが地元でとれる食料を食べることが食料自給率を上げ、ひいては自分自身や家族の健康に害のない安心安全な食事をとることにつながるきっかけになってほしいと思います。